最近のニュースで、携帯キャリアの「ソフトバンク」とメガバンクの「みずほ銀行」が提携して新会社を設立し、2017年からAI(人工知能)を利用した個人向けローン事業(消費者金融)の展開が始まる、という報道がありました。
この融資の手続きはスマホアプリだけで完結するようになっており、借入金は銀行口座に振り込まれる流れとなっています。スマホアプリだけで全て完結するのも魅力ですが、最も注目を浴びているのは人工知能(AI)による与信(審査)判断です。
AIによる融資可否の判定はどうやっているのか?
ソフトバンクとみずほ銀行の新会社は、融資の審査を行うのはすべてAIであり、利用者が借入できるかどうかは人間の判断が一切関わらないことになります。
そしてAIの融資判定の判断材料として、みずほ銀行の保有する預金や住宅ローンなどのデータ、ソフトバンクが持つ携帯電話料金の支払い状況のデータがインプットされることになります。
ただ、従来の大手消費者金融の審査も「スコアリングシステム」と言って、コンピュータにインプットされた莫大な量の属性データに基づいて、コンピュータが自動的に審査結果を出すようになっており、新会社のAIの審査可否の判断が大手消費者金融の審査結果と大きく変わることは無いと想定されます。
また、新会社も貸金業者として登録することになり、指定信用情報機関である日本信用情報機構(JICC)やシー・アイ・シー(CIC)に加盟し、信用情報機関に保管されている信用情報を照会することになるため、従来の消費者金融のカードローンと同様なデータを融資の判断材料にすることになります。
なお当然、信用情報機関のブラックリストも入手されるため、消費者金融で返済事故を起こしている人が新会社で融資を受けられる可能性はありません。
携帯電話利用者に対する与信項目が追加される?
ただ、新会社の融資判断で若干異なることがあるとすれば、消費者金融のカードローンでは審査項目に無かった携帯電話料金の支払状況が融資の判定に加味されることです。
つまり、従来の消費者金融カードローンを利用できなかった人でも、携帯電話料金の支払いに滞納が無ければ借入のできる可能性があるということです。
例えば、従来の消費者金融のカードローンは就業による安定・定期収入を絶対条件としているため、企業に勤める給与所得者を対象にしているところがあり、自営業者や派遣社員、商店の店員、アルバイト、年金生活者などを敬遠しがちです。
しかし、ソフトバンクなら電話料金の支払いの滞納の有無が確認できるため、支払いに問題なければこのような人たちにも貸出をする可能性があります。
また、インターネット専用の融資になるため店舗が要らず、その分のコスト削減から貸出金利が従来の消費者金融カードローンより安くなることが見込まれています。
新会社はみずほ銀行の個人融資への拡大戦略も担っている!?
実は、メガバンクであるみずほ銀行は個人融資では出遅れている面があります。同じメガバンクの三菱東京UFJ銀行には傘下に大手消費者金融のアコムがあり、三井住友銀行には同様にプロミスがあります。
ところが、みずほ銀行には傘下に大手消費者金融がありません。そこで、ソフトバンクと提携することで、個人融資を拡大したいという思惑が見られ、特に企業における貸出が停滞している中、堅調な個人融資事業の拡大はみずほ銀行でも急務と言えるのです。
【豆知識】フィンテックとは?
今回のソフトバンクとみずほ銀行の連携のように、IT技術を活用した新たな金融サービスを「フィンテック」と呼んでいます。
フィンテックとは「Finance(金融)」と「Technology(技術)」を合わせた造語のことですが、現在当たり前のように使われている携帯電話と電子マネー決済を利用したおサイフケータイなどもフィンテックと言えますし、銀行口座やクレジットカードの利用履歴をまとめた家計簿ソフト、一昔前からあるインターネットと金融業務を連携させたネットバンクやネット証券、などのサービスも金融+ITという点ではフィンテックなのです。
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