最近、政治のニュースで良く出てくるのが「配偶者控除の廃止」です。配偶者控除を廃止して、新たに夫婦控除という新制度が創設される予定とのことです。
配偶者控除の影と夫婦控除新設の経緯
現在、夫婦間における税金の優遇制度として、配偶者控除があります。配偶者控除とは仮に、妻の所得が一定額以下の場合に、夫の所得額から一定額を控除するものであり、結果的に夫の所得税(住民税含む)が安くなるという制度です。
妻の所得が低いということは税を負担する能力(担税力)も低いということであり、配偶者控除自体は租税の公平性の観点から正しい施策ではあります。
ただし、配偶者控除が1961年に創設された背景にあったのは税の応能負担ということよりも、専業主婦世帯を念頭に「家庭は妻が守る」という「内助の功」を尊重することが主旨でした。
つまり、現在のような共働き夫婦が一般化することは想定していませんでした。
そのために、配偶者控除の副作用が表面化し、妻が夫の配偶者控除のために、あえて所得が一定額を超えないように就労時間をコントロールするようになりました。
近年は少子高齢化に伴って労働者人口が減っており、女性の社会進出が必要とされている中、配偶者控除が女性の社会進出を拒んでいるのが実態です。
そこで、配偶者控除を廃止し、妻の所得に関係なく、夫婦の合計所得から一定額の控除をする「夫婦控除」の新設が検討されるようになったということです。
所得103万円の壁とは?
配偶者控除を受けるには、妻の所得が38万円以下であることが必要です。
妻がパートで働いている給与所得者の場合は給与所得控除(最低65万円)があるため、給与収入が103万円以下であれば、夫は配偶者控除を受けられます。
そのため、配偶者控除を受けられる103万円までしか働かないことから、巷では「103万円の壁」と呼ばれています。
なお、配偶者控除は夫の所得に関係なく一律38万円が控除されるため、所得の高い人ほどお得になります。
例えば、所得税率が5%の人は減税額が19,000円しかありませんが、税率が10%であれば38,000円、20%であれば76,000円も減税されることになります。
課税所得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円以下 | 5% | 0円 |
195万円超330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
企業の配偶者手当も女性の社会進出に影響?
配偶者控除とともに、妻の就労へのプレッシャーとなっているのが、企業から支給されている「配偶者手当」です。
実は、企業の約5割が配偶者手当を支給する基準として、妻の収入が103万円以下であることを条件としています。女性の社会進出を阻んでいるのは税法上の問題だけではなく、企業の配偶者手当の支給基準も影響しているのです。
夫婦控除の内容とは?
夫婦控除の具体的内容についてはまだ確定していませんが、方向性としては配偶者控除を廃止する代わりに、夫婦の合計収入額が一定額よりも低い世帯を所得控除の対象とする見込みです。
つまり、妻が就労時間をセーブする必要が無くなるため、共働きの世帯にとっては有難い制度になります。ただし、現在控除を受けている多くの世帯にとっては実質的に増税となるため、給与所得者からの反感の懸念もあります。
財務省の試算では、配偶者控除の対象者が約1,400万人もいることから、配偶者控除の廃止で約6,000億円程度の増収になる見込みです。
ちなみに、配偶者控除が廃止されても、妻の年収が130万円を超えると、夫の扶養から外れ、妻自身が社会保険料を負担しなければならない「130万円の壁」が立ちはだかります。なお、以下の条件に合致する人は130万円の壁が106万円に下がります。
【130万の壁が106万円に下がる条件】
・週20時間以上就労。
・年収106万円以上。
・勤務期間1年以上。
・従業員501人以上の企業。
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