不動産業者と締結した仲介契約は無視できるのか?

近年は少子化や核家族化が進んだせいか、10軒に1軒の家が空き家になっています。2030年には3軒に1軒が空き家になるという見通しも出ています。

ところで、必要の無くなった空き家を売ろうにも素人が買い手を探すのは難しいため、専門業者である不動産業者に仲介を依頼するのが一般的です。

しかし、時々もめごとの起きることがあり、それは持ち主である売り手が仲介業者に内緒で買い手と売買契約を結んでしまった時です。

仲介手数料を払いたくない理由での約束違反は法律上どうなるのか?

例えば、Aさんは両親が亡くなって誰も住まなくなった実家を売ろうと思い、近所にある不動産業者のBに仲介を依頼しました。

そして、Bが買い手を見つけて売却できた場合に、AがBに報酬を支払う約束になっていました。ごく普通の仲介契約です。

その数ケ月後、Bが買い手となるCを見つけてきてAに紹介しました。すると、Aは勝手に直接Cと売買契約を締結してしまいました。なぜなら仲介報酬を支払いたくないからです。

この場合、契約自体はAとCがお互いの合意の基、適法に売買したのであれば、法律上有効です。

しかし、それではBが契約を遂行するために掛けてきた経費と時間と労力が無になり、民法ではそのような信義則に反するようなことは許していません。

不動産業者は仲介手数料を請求することができるのか?

民法の130条には「条件の成就の妨害」という規定があり、「条件が成就することによって不利益を受ける当事者が故意にその条件の成就を妨げたときは、相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」と書かれています。

この規定を当てはめると以下の様になります。

まず、「条件が成就することによって不利益を受ける当事者」というのはAのことです。つまり、契約が成立すると、Bに対して報酬を支払わなくてはならないからです。

そして、「故意にその条件の成就を妨げたとき」については、Aが勝手にCとの契約を締結したことで、Bの「買い手を見つけて売却できれば」という条件の成就を妨げたことになります。

従って、「相手方は、その条件が成就したものとみなすことができる」という規定から、Bは仲介契約が成就したとみなすことができ、Aに対して報酬の支払いを要求できます。

逆に、相手方が故意にその条件の成就をなした場合は130条の類推適用によって、条件が成就していないものとみなされます。

逆に故意に成就をなした場合は条件が成就していないものとみなされる

例えば、AはBに対して、「君のパソコンが壊れたら、僕の持っているパソコンをあげるよ」と約束しました。

すると、Bは友達のCに自分のパソコンを渡し、システムを壊してもらえるように頼んだことで、CはBのパソコンの内部システムを破壊しました。

その後、Bは「パソコンが壊れたから、君のパソコンをくれ」とAに要求しました。

条件の成就によって利益を受ける当事者Bが信義則に反するような方法で条件を成就させた場合は、条件が成就したものとして扱うことは許されず、AがBにパソコンをあげるための条件は不成就とみなされます。

なお、130条は「故意」に条件の成就を妨害した場合にのみ適用され、「過失」によって条件の成就が妨害された場合には適用されません。

例えば、AはBに対して、「今度のC社との契約が取れたら栄転で引っ越すことになる。そうなると、自動車は要らなくなるから君にあげる」と約束しました。

ところが、AはC社から出された課題に対する回答を漏らしたため、C社との契約が破談となり、栄転も取り消され、引っ越す計画も無くなりました。

今回の場合はBがAに対して自動車の提供を要求しても認められません。故意ではなく過失だからです。故意によるものでない限り、条件の成就を妨げたことになりません。

根本は信義則に反するかどうかで、条件が成就したかどうかが判別されるのです。

民法上の条件と期限の定義とは?

ちなみに、民法では「条件」という言葉と、「期限」という言葉が良く出てきます。以下が言葉の定義です。

条件:法律行為の効力の発生または消滅を将来の不確定な事実の成就に掛かる法律行為の付款
期限:法律行為の効力の発生・消滅または債務の履行を、将来到来することの確実な事実の発生に掛かる法律行為の付款

例えば、父親が息子に「大学に合格したら、お祝いに10万円をあげる」と言ったとします。これは、「条件」です。

大学に合格するかどうかは分からないため、「将来の不確定な事実」になるからです。そして、条件の成就によって10万円をあげるという法律行為が発生します。

次に、同じように、父親が息子に「二十歳になったら、車を買ってあげる」と言ったとします。これは、明らかなように「期限」です。

誰でも間違いなく、二十歳になるという「将来到来することの確実な事実」に車をあげるというということを掛けています。

法律は一般市民の常識が判定材料になっています

簡単に言うと、将来発生することが「不確実」な場合は「条件」で、「確実」であれば「期限」ということです。それでは、「日本に雪が降ったら、エアコンを買ってあげる」と約束した場合はどうでしょうか?

日本に雪がいつ降るかなど誰にも分かりません。従って、不確実な事実のため条件です、とはならず、期限が正解です。

つまり、日本に雪が降るのは確実な事実と誰しも認識しています。確かに、理論的には地球温暖化の影響などで雪は降らないかもしれません。

しかし、法律というのは社会通念に基づく社会倫理規範であることから、一般市民が当たり前と思っている常識が法律における判定材料になっているのです。

あっきー

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