不当利得と特殊不当利得による返還請求可能な範囲とは?

最近はめっきり減りましたが、以前は弁護士事務所や司法書士事務所による消費者金融に対する過払い金返還請求のテレビCMが毎日のように流れていました。

一般的なのは、貸金業法改正前に横行していたグレーゾーン金利に対する過払い請求でしょう。

過払い金=不当利得とは?

過払い金というのは違法な金利によって支払い過ぎていた利息のことですが、これを法律的に言うと「不当利得」となります。

不当利得とは、正当な理由(法律上の原因・法律行為)も無いのに他人の財産から利益(利得)を受け、そうしたことによって他人に損失を及ぼすことを言います。

消費者金融の過払い金はこの不当利得に該当します。

不当利得を得た者には返還する義務があることから、消費者金融に対して返還を請求することが可能です。

・民法第703条
『法律上の原因なく他人の財産又は労務によって利益を受け、そのために他人に損失を及ぼした者は、その利益の存する限度において、これを返還する義務を負う』

加えて、過払い金返還請求に関しては、消費者金融が違法と知った上で行っているため、正式には704条が適用されます。

・民法第704条
『悪意の受益者は、その受けた利益に利息を付して返還しなければならない。この場合において、なお損害があるときは、その賠償の責任を負う』

また、不当利得には以下のような特殊なものもあります。

特殊不当利得では返還請求範囲が制限されてくる?

非債弁済とは?
・民法第705条
『債務の弁済として給付をした者は、その時において債務の存在しないことを知っていたときは、その給付したものの返還を請求することができない』

債務が存在しないことを知りながら、また誰かに強制されることもないのに、任意で債務の弁済として給付することがあります。
それを「非債弁済」と言います。

端的な例を挙げると、AさんはBさんとCさんからそれぞれ50万円ずつ借金をしていました。そして、返済日が来たため銀行に行き、まずBさんの口座にATMから50万円を振り込みました。
次に、Cさんにも振り込まなければいけないのですが、うっかり今の振込がCさんにしたものと勘違いし、続けてBさんに50万円を振り込んでしまいました。
つまり、Bさんには100万円を返済し、Cさんには未返済になったということです。

本来であれば、50万円を振り込んだ時点でBさんの債務は消滅するため、法律上の原因がないということでBさんに対し「不当利得返還請求」ができるはずですが、非債弁済の場合は返還請求ができないとされています。

要するに、返済をした上に追加の金額を贈与したことと同じ形になり、贈与の終了したものは返還請求ができなくなるという仕組みになっているわけです。

期限前の弁済とは?
・民法第706条
『債務者は、弁済期にない債務の弁済として給付をしたときは、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、債務者が錯誤によってその給付をしたときは、債権者は、これによって得た利益を返還しなければならない』

債務者が返済期限の前に債務を履行すると、期限前の弁済として処理されます。一度履行した債務を戻すことはできません。

例えば、債務者が返済期日前に債権者に対して借入金を返済した場合、「返済期日を勘違いして返済してしまった。まだ日にちが残っているから返して欲しい。期限になったら払うから」と言ってお金を返還してもらうことはできないというものです。

この規定を設けているのは、期限前に支払った返済金の返還を認めると、法律関係が煩雑なものになりかねず、また、債権者が債務者の早期返済は期限の利益を放棄したものと思って、弁済金を処分しているかもしれないからです。

時に、但し書きの「これによって得た利益を返還」というのは返済金を返還するのでなく、例えば、返済期日までの利息を受け取っていたなら、期日より早く返済した日数分の利息は返還しなければならないということを意味します。

他人の債務の弁済とは?
・民法第707条
『債務者でない者が錯誤によって債務の弁済をした場合において、債権者が善意で証書を滅失させ若しくは損傷し、担保を放棄し、又は時効によってその債権を失ったときは、その弁済をした者は、返還の請求をすることができない。 2.前項の規定は、弁済をした者から債務者に対する求償権の行使を妨げない』

民法には、誤認でしてしまった債務の弁済についても規定があります。

仮に、第三者が自分を債務者だと勘違いして債務を弁済してしまった場合、本来であれば債務を負っていない(法律上の原因がない)ため、弁済したものを返還してもらう請求ができるはずです。

ところが、債権者がこの弁済を正当な弁済だと信じて受け取り、借用書などの債権証書を処分したり担保を放棄したりした場合は、第三者の返還請求は認められないとしています(707条1項)。

この規定の趣旨は、債権者が真の債務者から債権を回収することができなくなる恐れが出ることから、誤った弁済者にそのリスクを負担させるためです。

債務は本人以外からの弁済でも消滅しますが、勘違いで弁済した人は真の債務者に対して弁済金を求償することができます(707条2項)。

不法原因給付とは?
・民法第708条
『不法な原因のために給付をした者は、その給付したものの返還を請求することができない。ただし、不法な原因が受益者についてのみ存したときは、この限りでない』

・民法第90条
『公の秩序又は善良の風俗に反する事項を目的とする法律行為は、無効とする』

違法にあたる原因に基づいて給付を行なった場合には、行為者は給付の返還請求をする権利がなくなります。

例えば、闇金による出資法の上限金利を超える金利での貸付が該当します。

また、麻薬の売買契約や売春契約なども公序良俗に反する契約であるため無効ですが(90条)、そのような違法行為のためにされた給付は、例え不当利得の要件を満たしていても、返還請求の対象になり得ません。

これを「不法原因給付」と言います。

当然、闇金が貸し付けたお金は不法原因給付に当るので、出資法違反の利息を請求することはできず(貸金業法42条の2)、貸付元金の返還請求もできません。

一方、借受人が闇金に対して弁済を行った場合、弁済したお金は不法行為を原因とした損害賠償請求により取り戻すことができます。

損害賠償請求については過去、裁判所の判断として、借受人は貸付元金をすでに受け取っているので、闇金が損害賠償請求額から貸付元金分を相殺することを認めていました。

しかし、その後、最高裁判所の判断により、借受人の弁済は不法原因給付により生じたものである為、これを損害賠償請求額から相殺することは、民法708条の趣旨に反するとして許されない事になりました。

ちなみに、いくら闇金からの借入金は返済する必要が無いからといって、最初から返済しないつもりで闇金からお金を借りると詐欺罪に問われる可能性があります。

ところで、不法原因によって贈与された物については、所有権が贈与者から受贈者に移ります。

その為、例えば、愛人関係という不法原因によって給付した物を愛人から取り戻すことはできないとされています。

上述してきたような、返済として支払ったお金の返還請求は、請求手続きなども一般的な返済より複雑になってきますから、なるべく無いに越したことはないでしょう。

借金などの債務の返済は後で後悔しないように、細心の注意を払って行うことが肝心です。

参照:行政手続のオンライン利用の推進(総務省)

あっきー

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