給与から天引きされる罰金は違法なのか?
- 2018/2/5
- 払う
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会社と従業員の間で起こるもめごとの中に、就業規則違反や仕事上のミスに対する「罰金」があります。
先日も、大手コーヒーショップチェーンの「罰金制度」が世間に知られ、批判を浴びていました。
そして、そんな時によくありがちなのが、労使の力関係から会社が罰金や損害額を従業員の給与から天引きすることです。
法律における罰金の規定はどうなっているの?
労働基準法第16条では、『使用者は労働契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない』と定めており、賠償の負担を雇用契約に入れることが禁止されています。
つまり、『仕事上でミスをした時は、○○円の罰金を支払う』、『無断欠勤をしたら、○日分の給与を減額する』というような、社内ルールを設定することは法律に違反することになります。
また、労働基準法第24条では、賃金支払いについて『直接労働者に、その全額を支払わなければならない』と規定しています。
従って、「罰金」として給与から一方的に天引きすることも法律違反です。
従業員に対する損害賠償請求は可能だが天引きは禁止
従業員の重大な過失によって会社に損害が生じた場合に、会社が従業員に対して損害賠償を請求することは禁じられていません。
ただ、会社は従業員を使用することで利益を上げているため、従業員のミスによって会社に損害が生じた場合も、その損害は会社が負担するのが原則です(報償責任の原理)。
仮に、従業員が損害を賠償する場合でも、全額を負担するということはほとんど無く、従業員の過失の程度、従業員の業務内容、会社の管理体制、教育・指導の有無などによって、損害額の一部(25%程度)を負担するのが通例です。
金額に関しては、「信義則」が大きなポイントになります。
その場合でも、給与からの天引きは違法であるため、別途従業員に請求することになります。
ノーワーク・ノーペイの原則とは?
労働基準法には「ノーワーク・ノーペイ」の原則があり、遅刻や無断欠勤の場合、遅刻した時間分や欠勤した日にち分は働いていないことから、その分の給料が支払われないことは法律違反にはなりません。
つまり、『遅刻1回につき罰金5,000円』だとか、『無断欠勤は1週間分の給与カット』といったような、給与の額や就労時間に関係なく罰金をとってはいけないということです。
懲戒処分による罰則としての減給は可能?
仕事上の多のミスや、無断欠勤を繰り返す従業員に対し、就業規則に基づいて「懲戒処分」や「減給」をすることは可能です。
つまり、就業規則に『○○の場合には減給する』という規定があれば、就業規則に定められた手続きにしたがって、減給という意味での罰金を取ることは可能なのです。
ただし、この減給における1回当たりの額は、1日の平均給与の半額を超えることはできず、また減給総額は1ケ月の平均給与の10%までと制限されています。
例えば、時給1,000円のアルバイトが1日8時間のシフト(休憩1時間)で20日間勤務していた場合、1日の平均給料は7,000円、1ケ月の平均給与は14万円です。このため、1回の減給額の上限は3,500円であり、減給総額は1万4,000円までとなります。
遅刻に対する減給は合法?違法?
就業規則で遅刻に対する減給を定めていることがよくあります。
ただ、合法のものもあれば、違法になるものもあります。
【例1:遅刻は5分単位で給与から控除するという規則】
1分の遅刻でも5分間分の賃金が控除されますが、就業規則に明記されているのであれば合法です。細かく見ると1分間はノーワーク・ノーペイの原則からの減給、4分間分が罰則としての減給となります。この場合、罰則としては最大でも4分間なので1日の平均賃金の50%を超えないので合法です。ただし、就業規則に記載がない場合は違法となります。
【例2:遅刻3回で欠勤1回の扱いにするという規則】
8時間勤務、月給24万円の社員がいたとします。仮に、1時間遅刻したとすると、減給可能額は1,500円(日給12,000円÷8時間)です。1時間の遅刻を3回した場合に4,500円の減給なら合法です。しかし、規則によって1日分の減給とすると、7,500円(日給12,000円-4,500円)が罰則による減給となり、平均給与日額の50%を超えることからこの規則は違法です。就業規則に明記してあっても違法となる以上、この罰則は無効です。
【例3:遅刻を3回すると半休扱いにするという規則】
半休であれば、1日の減給の上限である50%はクリアするため合法です。しかし、極端な話、1ケ月で15回の遅刻をすると、給与の2.5日分が減給されるため、月給の10%以内という規定を超えることから違法になります。
権利の乱用は当然認められません
ちなみに、1~2回の仕事のミスで懲戒処分をすることは権利の乱用になるため、認められることはありません。
このことは、労働契約法第15条で『使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする』としています。
また、懲戒規定を定める前の行為に対して懲戒処分を適用したり、一つの理由で複数回処分したりすることはできません。
さらに、連座制(違反行為の責任を本人の周りの人にまで及ぼす制度)も認められません。
労働基準法違反の罰則は?
会社が労働基準法に違反すると、「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」か「30万円以下の罰金」を科せられます。
このため従業員の違反行為や怠惰行為に対する罰則を安易に給与にのみ反映させるのは合理的とは言えません。
社内旅行などの為の費用の天引きは?
仕事上のミスなどの罰金の天引きに関しては上述してきた通りです。
時に、会社によっては給与から社内旅行の費用や親睦会費などが引かれることがあると思いますが、そういった際の天引きはどうなのでしょう?
原則、給与から天引きして良いのは法律で決められている、所得税や住民税などの税金、社会保険料、雇用保険料だけです。
ところが、会社内で行われる行事等にかかる費用の天引きは、あらかじめ労使協定などで定めており社員が同意をしている場合にしても良いとされています。
ただし、その際に行事・親睦会費用について十分に説明なされず、書面による同意書などがなかった場合は給与から徴収することは認められません。
また、原則、給与からの天引きで社内旅行や親睦が成り立っている場合でも、すべての社員に無条件でそれらへの参加と費用の天引きを強制させることは出来ません。
その為、社内行事や親睦会に参加しない場合は、それらの費用の天引きを拒否することは事実上は可能です。
勿論、社内行事に全く参加しない場合のみ、天引きを断ることが出来るので、参加する場合は社内旅行の費用や親睦会費の徴収を断ることは出来ません。
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