チケットの転売は違法なのか?
- 2018/2/5
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以前、若い女性に圧倒的な人気を誇るアイドルグループの「嵐」のコンサートで、チケット購入者と実際の入場者が同一人物かどうかを確認するために、「顔認証」によるチェックシステムを採り入れたことが話題になっていました。そのような面倒くさいことをしなければならなくなった原因が「チケットの転売」です。
実は先日、その「嵐」のコンサートチケットを転売したとして、25歳の女性が逮捕されるという事件がありました。その容疑が「古物営業法違反(無許可営業)」だったことから、ファンの間でも『使ってもいないコンサートのチケットが何で古物なの?』という疑問の声が上がっていました。
逮捕された女性は転売サイトを使って、嵐のコンサートチケット5枚を定価の1.6倍に当たる計約7万円で売った疑いがかけられています。この女性は他にも、チケット交換サイトや自費購入で手に入れたチケットを転売サイトに出品し、1年半で約1,000万円を売り上げた事実があります。
古物営業法とはなに?
法律違反に問われた古物営業法というのは、盗品の速やかな発見や売買防止、窃盗などの犯罪防止を目的として制定されました。そして、古物の売買を「営業」として行うには許可が必要とされており、無許可で営業した場合は、3年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。
なお、「古物」というのは、『一度使用された物品(中略)若しくは使用されない物品で使用のために取引されたもの又はこれらの物品に幾分の手入れをしたもの』と定義されており、開演前のチケットのように未使用のものでも、「使用のために取引されたもの」に該当するため、古物になります。また、古物は13品目に分類されており、コンサートチケットはこの内、金券類に該当します。
逮捕要因は?
今回の逮捕の要因を簡単に言うと、「無許可」で金券ショップの商売をしたからです。古物商を営むには各自治体の公安委員会(警察署)からの許可が必要です。許可を得ないで商売すれば闇金と同じようなものであり、当然捕まります。
捕まった女性は1年半を掛けて1,000万円を売り上げたため、「反復性」・「継続性」の観点から、まさしく「営業」であると判断されたのだと思われます。
実は、この女性は詐害行為?を何回もしていたらしく、ツィッターなどで『嵐チケット詐欺 香川県の○○(逮捕された女性の名前)と交換取引している方、すぐにやめてください。チケット送ってもあちらからは代金送ってきません。被害者多数出ています!春にNEWSでも同じことやっています』との情報が多数流されていたようです。
逮捕されるには販売枚数が影響するのか?
仮に、2〜3回売買しただけでは、古物営業法違反で逮捕されることはまずありません。過去には、ネットオークションで手に入れたSMAPなどのアイドル関係のチケットを金券ショップに転売して逮捕された事例がありますが、このケースは200万円以上の利益をあげたことで古物営業法違反の容疑がかけられました。利益の大きさが営業と判断された要因です。
チケット転売は迷惑防止条例にも定められています
仮に、この女性が許可を受けていれば、古物営業法で逮捕されることはなく、チケット転売を続けていられたかというとそうでもありません。それは、各都道府県が定めた「迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)」があるからです。
条文では、『何人も、公共の場でコンサートチケットなどを不特定の者に転売したり、転売目的で購入したり、チケットを公共の場で転売してはならない』とあり、多くの都道府県では、転売目的でチケットを購入することや、「公共の場」での転売を禁止しています。違反者には6ケ月以下の懲役か50万円以下の罰金が科されます
最近は見ることが無くなりましたが、一昔前まではプロ野球スタジアムやサッカースタジアムでは、『チケットあるよ、安く買うよ』と言いながら多くの「ダフ屋」が寄ってきました。しかし、迷惑防止条例によってダフ屋は消えていきました。
最近はネットオークションを使った転売が増えていますが、ネットオークションは仮想空間であり、物理的な「公共の場」とは言えないという裁判所の判断もあり、チケットを大量に購入するなどの転売目的が明確でないと逮捕されにくい傾向があります。ただ、ネットオークションでも常態的に取引をする場合は当然、古物商の許可が必要です。
もっとも、ネット上でチケットを売買したとしても、実際には、コンサートやイベント会場周辺で現金とチケットを交換した場合は、ダフ屋行為になり得ます。
ところで、迷惑防止条例はあくまでも、「転売目的で購入」という行為を禁止しています。「当初は行く予定が、用事ができて行けなくなったことで転売する」行為は禁止していません。従って、『本当は行くつもりだったのに行けなくなったから!』と言い訳すれば、処罰されることはありません。
しかし、同じコンサートやイベントのチケットを大量に転売したり、ネットサイトに出品したりすると、『本当は行くつもりだった』は当然通用しません。
その他の法令での検挙例
また、珍しい例では、チケットを高値で転売したとして、「物価統制令」違反で逮捕されたことがあります。物価統制令では「不当に高価」または「暴利となるべき」価格によって売買の契約をし、又は売買により金銭を受領する事を禁じており、違反すると10年以下の懲役または500万円以下の罰金に処されます。
さらに、コンサートやイベントなどの主催者が転売されたチケットでの入場を禁止している場合、使用できないチケットであることを知りながら転売すると、詐欺罪が成立する余地もあります。
ちなみに、チケットを偽造した場合はお話になりません。コンサートやイベントのチケットは、コンサートやイベントを見ることができるという権利が表示された「有価証券」です。これを偽造した場合は、有価証券偽造罪として3カ月以上10年以下の重い懲役刑が科されます。
今回の逮捕は何と言っても反復性・継続性が一番の問題です。長い間、常態的に取引を行っているから、目を付けられたわけです。
たまに、いらなくなったチケットを転売することは個人間の自由な売買契約であり、法律は関知しません。なお、転売チケットを買った側に対する法的な罰則規定はありませんが、主催者が転売チケットでの入場を拒否していた場合、入場できなくても主催者に文句は言えません。
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