安倍内閣は残業時間を月60時間以内に規制する政府案を示しました。
当然、残業には割増賃金が支払われることになりますが、それでも「残業時間が減ると、収入が減るからいやだ」という人がいるかも知れないので、良い悪いは当事者にしかわかりません。
一方、政府は少子高齢化による労働力不足を補う目的から「働き方改革」として、勤務先以外で働くテレワーク、兼業、副業などの働き方を推進しています。
それに伴い、現在の厚生労働省の「モデル就業規則」から副業・兼業禁止規定を無くし、「原則禁止」から「原則容認」に変える方向です。
過去、モデル就業規則に則って副業を禁止する企業が一般的でしたが、副業を認められる風潮が起きそうです。
実際に、企業の中にも多角的な視点を養うという観点から、副業を許可したり、奨励したりするところが増えています。
そもそも、副業は本来、なにも頭ごなしに禁止されるべきものではなく、「本業に差し支える可能性がある副業が禁止。」とされているのです。
加えて、雇用契約の効力は、本業での就業時間に限られるはずですから、原則、終業後はその範囲にないので自由で良いといえるでしょう。
副業での賃金が残業代扱いになる?
政府の方針をそのまま受け取ると、勤務時間に副業するわけにはいかないので、60時間の範囲内で副業をすることになりそうですが、問題になるのが「賃金」です。
労働基準法第38条1項では「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされています。
つまり、本業であろうが副業であろうが、8時間を超えて働いた分は残業になり、割増賃金が発生するということです。
それは正社員であろうと、パート・アルバイトであろうと変わりはありません。
また、労働基準法第37条では「使用者」が残業代を支払うとなっているため、仮に、勤務時間を過ぎてからコンビニや飲食店で副業をすると、コンビニや飲食店が残業代を支払う必要が出てきます。
例えば、本業で9時から18時まで仕事をし、19時から22時までコンビニで副業として働く条件で雇用された場合、コンビニは賃金に割増分を加えて支払わなければなりません。
仮に、時給が1,000円だった場合は1,000円×1.25倍×3時間で、1日3,750円が支給金額になります。
ところで、仮に早朝の5時から8時までコンビニで副業し、9時から18時まで本業で仕事した場合の残業代はどうなるのか?
1日の通算で計算すると、15時から18時までが残業となります。この場合も、残業代を支払うのはコンビニです。
労働基準局では残業代を支払うのは、「当該労働者との労働契約を新たに締結した事業主」としています。
個人事業主は適用なし
この残業代の規定はあくまでも「労働者」に対するものであり、個人事業主には労働基準法が適用されません。
業務委託としてシステムエンジニアやWEBライターなどのフリーランスで副業をしている場合は、どんなに残業をしたとしても、割増分を請求することはできません。
上記のことは法律上の話であり、現実には、副業の時給に割増分を上乗せしてもらうのは難しいのが実態です。
雇用する方にしてみれば、支払える賃金は決まっており、副業としての割増分を取られるなら割増分の時給を低くするということがあり得ます。
政府の方針によって残業代の扱いがどのように変わるのかは不透明です。
ちなみに、残業代を支払わないと、法律では「6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金」となっています。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。