現代も「坊主は丸儲け」!?宗教法人と税金の兼ね合いは如何に?
- 2018/2/5
- 税金
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昔からよく使われる「坊主丸儲け」という文言があります。
この言葉は、肴三層倍、呉服五層倍、花八層倍、薬九層倍、といった江戸時代の商売の仕入れに対しての平均利益を指す例の、一番利益率が高いものとして挙げられます。
よく一緒に使われるのは花八層倍、薬九層倍の二つのようで、「花八層倍、薬九層倍、寺の坊主は丸儲け。」と使われるのが一般的です。
おそらく、寺=葬式といった構図に則ったうえで、関連がある花屋と薬屋という2つの業種を主に挙げているのでしょう。
粋な皮肉の効いている構文といえます。
つまり、花屋や薬屋は仕入れ値の8、9倍(=八層倍、九層倍)の利益計算なのに、仕入れをしなくても身一つで読経をするだけで、お布施が丸っと全部懐に入る僧侶を揶揄した、いわゆる文句です。
なぜ、このような文句が現代でも使われるのか?といえば、大きな理由の一つに、宗教法人に対する非課税の待遇が挙げられるでしょう。
その為、厳密にいえば仕入れと利益の話が元である「江戸時代の坊主丸儲け」とは意味が少し違ってきますが、結局のところ昔も今も「お坊さんは特別扱いでずるい!」という事が言いたいだけです。
ただし、すべてのものが非課税ということはなく、収益としての所得に対しては税金が掛けられています。
宗教法人が非課税の税金とその条件は?
法人税
宗教法人がお布施や戒名、葬儀などの主な宗教行為で得た所得や学術、慈善などを目的とした寺院発行の冊子類(寺報など)の会費やその代金は公益事業として非課税です。
ただし、厄除けグッズなどの物品販売は、税法で定められた収益事業ならば課税されます。
それでも、収益事業で得た所得の2割まで控除できる上、残った8割に対する税率も所得が800万円を超えた場合で19%(一般法人では23.9%)と優遇されています。
なお、宗教法人における収益事業とされる事業には34種類あり、物品販売業や不動産販売業、駐車場業、旅館業などがありますが、変わったところでは、浴場業、美容業、労働者派遣業、遊技所業なども含まれるようです。
お守り、お札、おみくじ等の販売については売価と仕入原価との差額が通常の物品販売業における利益計算と比べて明らかに大きい為、実質的な喜捨金(寄附金)と認められる場合は収益事業に該当しません。
簡単に言うと、お守り、お札、おみくじに関しては、縁起物として明らかに原価より高い売価を納得して支払う分には、購買というより寄付に近い行為である為、収益事業ではないという事です。
線香やろうそく、供花などの場合は参詣として神前、仏前等にささげるためのものも収益事業には含まれません。
宗教は何かをしたり、手に入れれば、必ずなんらかの成果があるというものではなく、宗教に関する行為や物と接することで精神の安定を図る。のが本来の機能となっています。
特定の宗教法人だけが取り扱っている、お守りやおみくじ、お札、線香やろうそく、供花を購入するというのは、その意図に当てはまるものですから、商売ではなくある種の宗教行為となり、それによる利益は喜捨金と認められるのです。
しかし、一般の物品販売業者でも扱っているような、絵はがき、線香、ろうそく、供花、メダル、楯、ペナント、キーホルダー、箸、陶器などを通常の販売価格で販売する場合は、例え宗教法人の名前やデザインが施されていたとしても、収益事業(物品販売業)に該当します。
そして当然、宗教法人が土地の一部を貸し付けたり、売店や食堂を建てて業者に貸し付けたりしている場合は、不動産貸付業に該当するため収益事業として課税されるというのは言うまでもないことでしょう。
また、本堂や講堂などの寺社施設を娯楽や遊興、慰安のために使う目的で「席貸し」した場合もすべて収益事業(席貸業)と捉えられます。
加えて、個人事業の寺社の場合はお布施も事業所得として通常に課税されます。
消費税
課税対象となる対価の年間合計額が少額の場合(現行では1,000万円未満)には納税義務が免除されます。
登録免許税
登録免許税は通常、不動産の所有権移転登記手続きの際に掛かる税金ですが、社寺境内地や寺社仏閣、社務所、信者会館などは都道府県知事の証明書を提出すれば免除されます。
同時に、不動産取得税や固定資産税に関しても、都道府県知事から発行される境内地・境内建物証明書を提出することで非課税となります。
印紙税
宗教法人であっても、不動産の売買や金銭貸借などの契約書には金額ごとに所定の印紙を貼ることで、印紙税を納めなければなりません。
ただし、代金などの領収書は例え収益事業に関して作成するものであってもすべて非課税とされ、印紙を貼る必要はありません。
地方税
収益事業に対しては、法人都道府県民税、法人市民税が課せられますが、所得の計算は法人税(国)によります。
国税と同様に、本来の宗教活動をするために使用する境内地やその建物に掛かる不動産取得税や固定資産税は原則として非課税です。
儲かるならお坊さんは減らない?
最近は、一般の求人サイトで「僧侶募集」という広告が出るほど、僧侶になる人が減っているようです。
実際に、散骨や葬式・埋葬の多様化が進んだためか、休眠宗教法人がここ十数年で激増しています。
また、この休眠宗教法人が詐欺集団などに買い取られ悪用されることも少なくありません。
そのように、宗教法人の皮をかぶって不当に脱税をする人がいるのも、現代でも「坊主丸儲け」と揶揄されてしまっている理由の一つと言えるでしょう。
しかし、その悪評の害を被るのは、詐欺や脱税をする当人たちではなく、本職の僧侶とその寺院、ひいては日本の宗教概念そのものといえます。
何年も続いているようなお寺を残す意味では、税制面の優遇は必要な処置です。
しかし、果たして不透明な宗教団体にも宗教法人としての税制を適用して良いものかは甚だ疑問であることは確かです。
ちなみに、住職や弟子の僧侶に支払われる給金には税金が掛かります。
宗教法人は収入の面で優遇されますが、支出に関しては他の公益法人と比べて何も変わりません。
また、勘違いしてはいけないのが、非課税になるのは「お坊さん」だからではなく、宗教法人には上述した内容の税金制度が適用されるからです。
なにも冒頭の言葉の額面通りに、お坊さんだけが特別なわけではありません。
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