企業年金の種類と確定拠出年金の特徴とは?
- 2018/2/5
- 受取る
- 2 comments
現在、国民の間で最も不安を抱かれている国の制度と言えば、間違いなく「公的年金制度」です。
高齢化社会が進展したことで、高齢者に支給する年金を稼ぎ出す若者の数とのバランスが崩れていることが不安の大きな要因になっています。
そのため、保険料を納めても、受給資格を得た時には納めた分の年金が貰えなくなるのではないか?との思いから、保険料を納めない若者が未少なくありません。
なお、国には頼らずに自身で保険会社の「個人年金保険」に加入している人もいますが、企業に勤めているサラリーマンは「企業年金」を利用できるようになっています。
企業年金とは一体何?
公的年金制度としては1階部分に当る「国民年金(自営業者・無職・学生など)」と、2階部分に当る「厚生年金(サラリーマン・公務員・教職員など)」がありますが、その上の3階部分に当るのが私的年金である「企業年金」です。
実は、仕事の退職時に退職金を一括で貰わず分割で貰う事が、この企業年金にあたります。
ただ、企業年金はすべての企業で提供されているわけではなく、主に大企業で採り入れられています。
企業年金には厚生年金基金、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金の3つがあります。
厚生年金基金とは?
過去、企業年金と言えば主に厚生年金基金を指していました。
制度としては、企業が厚生年金基金を設立し、国(日本年金機構等)に代行して厚生年金保険料の一部を管理、運用、給付するものです。
元々企業年金の目的は、老齢厚生年金の給付を企業が代行するとともに、企業独自の給付を加えることで従業員の年金額を増やし、そのことによって従業員の退職後の生活を保障することでした。
また、求められる利率よりも高い利回りで運用できれば企業にとってもプラスとなります。
しかし、バブル崩壊度、運用環境が悪化したことで大幅な運用赤字となる基金が増加し、代行部分を国に返上したり、解散したりする基金が増加しました。
そのような状況から法律が改正され、2014年以降は新規の基金設立ができなくなり、事実上企業年金しての役割が終わりました。
確定給付型企業年金(確定給付年金)とは?
確定給付年金とはその言葉通り、企業が給付額(年金額)を従業員に約束し、企業の責任において運用する年金制度のことです。
従業員の勤続年数や給与額によって年金給付額が決まるのが一般的です。
大きく分けて、事業主が実施主体となる「規約型」と、別法人として設立した企業年金基金が実施主体となる「基金型」の2種類がありますが、実施されている確定給付年金のほとんどは規約型になっています。
確定給付年金の場合、従業員に決められた額の年金を支給しなければならないため、企業にとっては大きな負担になります。
過去、JAL(日本航空)が経営破綻した時に、高利回りの確定給付年金が採算悪化の要因の一つだったことが話題になりました。
現在のようなゼロ金利の時代の運用は企業のリスクが大き過ぎるため、近年は確定給付型の年金制度を維持する企業が少なくなっています。
企業型確定拠出年金(確定拠出年金)とは?
確定拠出年金が確定給付年金と根本的に違うところは、確定した拠出金(掛金)を従業員自身が運用するということです。
アメリカの内国歳入法第401条(k)項に規定された制度を真似ていることから、「日本版401k」とも呼ばれており、2001年からこの制度が導入されています。
確定拠出年金では基本的に企業が定められた年金保険料(掛金)を積み立てていきますが、「マッチング拠出」と言って、一定の範囲内で従業員が追加で掛金を支払うこともできます。
掛金は確定していますが、実際に従業員に年金として支給される金額は運用の結果次第で変わり、運用がうまくいけば増額されますが、失敗すれば減ることになります。
年金の運用は従業員自身の判断で行われるため、企業にとっては確定給付年金のような運用失敗によるリスクを抱えることがありません。
現在の企業年金の主流はこの確定拠出年金になっています。
確定拠出年金のメリットとデメリットは?
企業年金の主流である確定拠出年金についてもう少し詳しく説明します。
確定給付年金は退職時に会社から給付されますが、確定拠出年金は先に会社から掛け金が支給され、その掛け金で運用することは先述した通りです。
掛け金の月額の上限は55,000円、他の企業年金(確定給付年金や厚生基金年金)と併用の場合は27,500円と定められています。
運用商品は会社と提携している運営管理機関によって予め定められたいくつかの商品(リスクの異なる3種類以上の商品)の中から加入者が自由に選択できます。
その内の1つには、必ず法的に保護されている元本保証型商品(預貯金、利率保証型保険商品など)が含まれており、また、少なくとも3ヶ月に1回は運用商品の預け替えができるようになっています。
仮に、リスクのある投資信託を選んだ場合は金融・経済ニュースをチェックしながら、長いスパンで経済の動向を注視する必要があるでしょう。
ちなみに、当然、手数料(信託報酬)が掛かります。
確定拠出年金のメリットとしては、運用利益が非課税となっている上、年金の受け取りに関しても退職所得控除(一時金の場合)や公的年金等控除(年金受け取りの場合)の活用できることが挙げられます。
また、個人別に年金口座が用意されているために年金資産を明確に把握でき、残高の管理が容易です。
加えて、転職する際には退職金として精算する必要がなく、転職時点での資産をそのまま転職先に移すことで、継続して運用することができます。
確定拠出年金で注意すべきことは中途解約ができません。
60歳以降に受給できる時までお金を引き出せないため、預金としての利用は無理です。
それと、会社によって制度の導入の有無がまちまちであり、事前に確認する必要があります。
どのような形であれ、企業年金のない従業員と比べると、企業年金のある従業員にとっては企業年金の存在自体がメリットと言えます。
ただし、企業年金を上述してきたような形で退職後に分割で受け取っている間、企業の経営状況にもらえる金額が左右されることがあります。
その点を考慮すると、退職金として一括でその時もらえる金額を受け取っておいた方が、十分な額がもらえる場合もあります。
企業によっては、一括での受け取りか分割での受け取りか、従業員が選べる場合があります。
それぞれの仕組みを理解して、納得のいく選択をすることが退職後の生活の安定性につながるといえるでしょう。
コメント
この記事へのトラックバックはありません。
この記事へのコメントはありません。